VR(ヴァーチャルリアリティ)は、見知らぬ場所や未知のリアルな体験が得られる3D映像コンテンツとして、分野や業界を問わず、利用の幅が拡がっています。
あたかも自分がその場にいるような疑似体験ができることから、映画やゲームコンテンツなどのエンターテインメントの利用から、職人の伝統技法の継承や遠く離れた観光地を知る旅行の下調べ、名医の手法の学習ツールなど、無限大の可能性を秘めています。
ここでは、とくに増えている建設の安全がVRで学ばれる理由について解説します。建築業界で働く方や労務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
■建設業界にVRが使われているのか
では、どのような点から建設業界にVRが使われているのかをみていきます。建築業界と言っても、設計やデザインから実際に施工する建設現場など、さまざまな職種に分かれています。
カタチのない建造物を作るためには、精度の高いシミュレーションが必要となり、VR空間上で設計や検証を行えば、より効率的に短期間で精度の高い業務が遂行できます。加えて、建設現場には目に見えないリスクや危険が潜んでいる可能性があります。
万一、ミスや事故が起こると甚大な災害にも繋がるために、それらの防止や安全に対する意識向上、対処方法を学習する必要があります。現場で従事するスタッフに対して、分かりやすく、安全な研修トレーニングツールとしてのVRの積極的な活用が考えられ、VRと建設業は親和性が高いと言えるでしょう。
■建設業界でVRを用いた安全教育の事例
実際に建設業界でVRを利用している安全教育の事例を説明します。
・ジョリーグッドの「Guru Job VR」
先進のVRの研究開発から、さまざまな分野や業界を想定した独自のVRソリューションを提供するジョリーグッドはVRとAIテクノロジーを組み合わせた「Guru Job VR」をリリースしています。遠隔地にいても、職場の雰囲気が伝わり、何度も繰り返して仕事を体験できるため、建設現場における「初めて」を減らし、万一の場合でも落ち着いて安全な対応ができる人材育成ソリューションとして、広く利用されています。
・明電舎の「災害体感VR」
https://www.meidensha.co.jp/products/plant/prod_01/prod_01_01/index.html
鉄道電力監視システムやプラント建設工事電気などを手掛ける明電舎では、臨場感あふれるVRコンテンツ「災害体感VR」を使って、建設現場に潜む「墜落災害」「転落災害」「火傷災害」「交通事故」をリアルに再現します。建設現場の危険防止や従事するスタッフの安全意識を高める安全教育プログラムとして利用されています。
・アクトエンジニアリングの「目撃型VR」
リアルな仮想空間の中で、等身大の世界で起きる事故や災害を再現します。目撃者の目線で事故や災害を体験することで、事故発生のメカニズムや原因を理解し、体験者同士で再発防止策を検討・議論できる点が特徴のVR教育コンテンツとして利用されています。現在は「内部足場(ステージ)からの墜落」「サンダーの反発」「外部足場最上部からの墜落」がシリーズとして発売されています。
・大成建設の「T-iROBO Remote Viewer」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2017/170123_3748.html
「T-iROBO Remote Viewer」は、自然災害等で立ち入りのできない被災地の復興をVRで支援するソリューションです。
被災地から離れた遠隔地から、重機の左右に取付けられたステレオ方式の魚眼カメラの映像をリアルタイムにHMD(ヘッドアップディスプレイ)に映し出し、効率的で安全に重機を操縦することが可能です。
・福井コンピュータの「TREND−CORE VR」
https://const.fukuicompu.co.jp/
「TREND−CORE VR」は、独自の点群データを利用した3次元モデル作成ソフト「TREND−CORE」と連動し、手軽にリアルで没入感の高い仮想現実を体感できるソリューションです。
デザインの検討や確認から、社員教育、各種プレゼンテーションなど、建設業で幅広く活躍するVRコンテンツとして利用可能です。
■建設業でVRを使うメリット
設計・デザイン段階ではリアルな精度の高いシミュレーションツールとして利用が可能なため、時間短縮や人件費の削減効果のメリットが期待できます。
建設現場では、潜在する危険やリスクを没入感の高いVR映像で再現できるため、何度も繰り返して、何時でも場所を選ばず体験することが可能です。
視聴覚コンテンツ以上に学習効果が高いVRコンテンツは、研修トレーニングでは再現が困難な危険な体験が実際できる点も大きなメリットと言えるでしょう。
■建設業でVRを使うデメリット
没入感・臨場感の高い3DVRコンテンツの制作費は、通常の2D映像コンテンツと比較すると、手間や時間がかかるため割高になる傾向にあり、デメリットと言えるかも知れません。
また、よりリアルなVR効果を得るためには、HMD(ヘッドアップディスプレイ)などのVR機器が必要となるため、導入時には初期費用を計上する必要があります。
■今後建設業界でVRの利用は増えるか
視聴型の2D映像コンテンツとは異なり、体験型のVR教材は学習効果が高いと言われています。建設現場の危険やリスクの習得、安全意識の向上には最適な研修トレーニング教材と言えるでしょう。VRと建築業界との親和性も高く、メリットも多いため、今後ますますVRの利用が増えると推測されます。