かつては制作コストが膨大にかかることや、汎用的な市販の制作機材がないために、VR(ヴァーチャルリアリティ)は、ゲームソフトや映画、アミューズメント施設をはじめ、研究機関や軍事施設の利用など、大きな予算がかけられる用途に限定されていました。
しかしながら、近年制作するためのPCの高性能化や360°カメラの普及とともに、VR動画コンテンツの需要も高まり、さまざまな分野で導入されるようになりました。
なかでも2016年にOculusやGoogle Cardboard、Daydream、Gear VRが相次いで発売されたことから、急激にVRが注目され市場が拡がったと言えるでしょう。
ここでは、VR撮影の仕組みや撮影方法について説明します。
VR動画コンテンツの制作を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
https://www.moguravr.com/terms/index-h/vr-gannen/
■VR撮影とは
VR撮影とは、通常の2Dカメラを使用した撮影とは異なり、奥行きと広がりのある3DVR映像を専用の360°VRカメラを使用して撮影することを言います。
また、付随する一連のVRコンテンツ制作工程を総称して、ここではVR撮影と定義します。
360°VRカメラで撮影した映像素材を使用することで、立体的な仮想空間の中でリアルな疑似体験が可能となります。
現在は需要の高まりとともに、片手で操作できる手ごろなハンディタイプの360°VRカメラがさまざまなメーカーから発売されるようになりました。
一方で映画やテレビ番組、ライブ中継で使われるような、鮮明で高精細なVR動画を必要とする場合は、たくさんのカメラやレンズを搭載した、数百万円もするような高価な360°VRカメラが使われます。
また、VR撮影の利用方法も色々なカタチとして現れ、スポーツやイベント、音楽ライブのリアルタイムのVR動画中継をはじめ、企業や大学の疑似体験コンテンツ、安全やコンプライアンスを遵守するための研修コンテンツ、世界の美術館や博物館、名所、旧跡を巡るトラベルや芸術コンテンツ、不動産を紹介する疑似体験コンテンツなど、さまざまな分野や用途で利用されるようになりました。
また、個人で撮影したVR動画をSNSで共有したり、VR配信サービスで自宅にいながらVRコンテンツのレンタルや購入、視聴が可能になるなど、利用方法もさまざまです。
■VR撮影の仕組み・撮影方法
では、VR撮影の仕組みや撮影方法について説明しましょう。
VRカメラは全方位カメラや360°VRカメラとも呼ばれています。
また、カメラの仕組みとして魚眼レンズを1個使用したVRカメラは、半球カメラと言い球体の半分しか撮影することはできません。それに対して2個以上のレンズを搭載したVRカメラは一度で上下左右360度の撮影が可能となる全球体カメラと分類されます。
プロフェッショナルユースの高価なカメラ機材になると、球体に8つのマルチレンズを配置したノキアOZOや16台のカメラを放射状配置するGoPro Odysseyのように、つなぎ目や歪みのない高精細VR動画の撮影を可能にする機種もあります。
また、魚眼レンズを搭載した数万円のエントリーモデルであっても、スナップ写真感覚で簡単に高精細VR動画を撮影し、その場でスティッチングされた映像をアップロードしてFacebookなどのSNSやYouTube上で世界中の人たちと共有する楽しみ方もあります。
他にもBMXやモーターバイク、スキーやスノーボード、スカイダイビングやパラグライダーなど、動きの激しいシーンを撮影するための、手振れに強く、耐衝撃性・防水性・防塵性・体感性に優れるアクションカメラも人気です。
VR撮影を行う上で留意したいのは、できるだけカメラをしっかり固定してブレや歪みの少ない映像を撮影することです。VR動画コンテンツにつきものの、VR酔いを感じる人がいるからです。ブレや歪みを極力なくすことで、VR酔いを軽減することが可能です。
高価な360°VRカメラであれば、振動や揺れを吸収するスタビライザーが本体に組み込まれている機種もありますが、そうでない場合はしっかり脇を締めて保持する、スタビライザーが内蔵された三脚を使用する、アクセサリーを使用して肩からベルトで身体に固定する、ホルダーを使用するなど、ブレや歪みをなくすように撮影方法を工夫しましょう。
撮影したVR動画を編集段階でブレや歪みを補正したり、つなぎ目が分からないようにスティッチング処理をかけることもできますが、使用するソフトに依存したり、余計な工数を減らすためにも、映像素材の段階でブレや歪みを極力なくした、クリアな素材の撮影に心がけましょう。
最後にVR撮影の仕組みを流れに沿って大まかに説明します。
VR撮影は次の手順に沿って行います。VRコンテンツに3DCGやナレーションを挿入する場合は、別途素材を用意します。
・VR撮影を行うコンテンツのシナリオを作成する
どのような流れでVRコンテンツを作成するのか、どのようなシーンやアングルを撮影するのかなど、細部にわたりコンテンツのシナリオを作成します。
・VR撮影を実施する
シナリオに沿ったシーンを360°VRカメラを使用して撮影します。
できれば確認のためにも、絵コンテや仕様書などを用意すると、スムーズに撮影が進むでしょう。
・撮影したVR映像素材を編集する
ビデオ編集ソフトを使って編集を行います。
スティッチングを行い、つなぎ目のない映像に展開します。併せて歪みやブレを補正します。基本となるカット編集で不要なシーンをカットします。
シーンとシーンの間に視覚的な効果が高い、トランジションを設定します。
ナレーションや吹き出し、テキスト、BGM、3DCGなどを挿入します。
視聴するVR機器の規格に合わせ、VR動画を保存します。
・視聴する
VR機器にVR動画をインストールして完成です。
より没入感や臨場感を体験するためには、VRゴーグルやHDM(ヘッドマウントディスプレイ)の使用をおすすめします。