かつては膨大な制作コストがかかったVR(ヴァーチャルリアリティ)コンテンツも、PCの著しい性能向上やリーズナブルな360°VRカメラの出現により、大変導入しやすくなり、さまざまな分野で見かけるようになりました。
旅行先でバッグやポケットからコンパクトな360°VRカメラを取り出し、撮影したその場で友人や家族とリアルに体験を共有することも可能です。
ここでは、一般的なVR撮影する方法について説明します。
これからVR動画の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
■VR撮影とは
立体感のある3次元VR映像の撮影を含む、VRコンテンツ作成のことをVR撮影と定義します。
普通の2次元のビデオカメラで撮影した映像とは異なり、360°が撮影できるVRカメラを使用して3Dの空間や物体などを撮影します。
こうして撮影した奥行きと広がりのあるVR画像は、没入感・臨場感の高いVRコンテンツを作成する上で必要不可欠です。
一般的にVR撮影と言っても、静止画像を撮影してパノラマで展開するVR画像と動きのある立体映像を撮影するVR動画に大別されます。
最近は片手でボタンを操作できる魚眼レンズを装備した手軽に利用できるハンディタイプのカメラをはじめ、マルチレンズを備え、歪みやブレのないシームレスな360°VR動画を撮影するハイエンドカメラまで、幅広い価格帯のさまざまな製品が発売されています。
また、撮影した2D/3DのVR映像をその場で簡単にアップロードしてFacebookやYouTube、SNSで共有できる機能を備えた機種もリリースされ、利用の幅が拡がっています。
最近は需要が増えてきたこともあり、ひと頃のデジカメと変わらない、価格を抑えた個人ユーザー向けの360°VRカメラも数多くラインナップされ、人々の間に広く普及しています。
魚眼カメラのベーシックなモデルは数万円から販売されていますが、中には数百万円もするプロフェッショナル向けの360°VRカメラも販売されています。
プロフェッショナル向けの360°VRカメラはたくさんのカメラやレンズを放射線状あるいは球状に配置したデザインが特徴です。
かつてはラジコンヘリコプターを使って撮影してした上空からの俯瞰映像も、ドローンと360°VRカメラを組み合わせることで、クリアで揺れの少ない撮影が可能になりました。
■VR撮影に必要なもの
実写のVR動画コンテンツの場合は、特殊な360°VRカメラを使用して、立体的な3D映像を撮影します。
撮影したVR動画を映像編集ソフトに取り込み、必要なシーンを抜き出し、繋ぎ合わせるカット編集、シーンとシーンのつなぎ目にスピンやフェードイン、フェードアウト、ディゾルブなどを加えるトランジション効果、ナレーションやBGM、テキストなどを必要であれば挿入します。
この際に3D CGを用いる場合は、別途3DCGソフトを用いて3Dデータを作成します。
まとめると以下のような機材が必要となります。
・360°VRカメラ
主な360°VRカメラの機種
RICHO THETA、Gear 360、Key Mission、iZugar、Nokia OZO、QooCam、Kodak、Insta360、Go Pro、Go Pro Odysseyなど
・映像編集ソフト
主な映像編集ソフトの機種
サイバーリンク「PowerDirector 15 Ultra」、アドビ「Adobe Premiere Pro CC」、アップル「Final Cut Pro」、ジョリーグッド「Guru VR」、NCH Software「VideoPad」、ソースネクスト株式会社「VR Studio」、スペースリー「スペースリー」、Easypano「PANOWEAVER10」、PTGui「360度パノラマVRソフト」、パノラマ工房「PanoCreator」など
・3DCGソフト
主な3DCGソフトの機種
オートデスク「3dsMax」、オートデスク「Maya」、フォーラムエイト「Shade3D」、ディ・ストーム「LightWave 3D」など
・PC
使用するソフトによって、OSがWindowsかMacOSなのか使用環境が異なる場合があるので確認してください。
■VR撮影方法
VR撮影を含む、VR動画コンテンツの制作の大まかな流れは次通りです。
1.コンテンツのシナリオ策定
・どのようなコンテンツを制作するのか流れと要素を決定する
・360°VRカメラを使って、どのようなシーンをどんなアングルで撮影するのか
・3DCGを使用するのか
・ナレーションや音楽は必要か
・テキストを挿入するのか
・シーンとシーンの間にトランジションを使用するのか
コンテンツのシナリオが完成したら、実際のロケを行うために360°VRカメラの選定や現場の下見などをした上で詳細を決めます。
また、空撮が必要な場合は、安全に配慮し、必要であれば事前に撮影許可を取ります。
2.360°VRカメラを使用した撮影
シナリオに沿って必要なシーンを360°VRカメラを使用して撮影します。
3.3DCG制作およびナレーション録り
3DCGやナレーションを挿入するのであれば、並行して素材を用意します。
4.ビデオ編集
コンテンツのシナリオに沿って、ビデオ編集ソフトで編集を行います。
この工程で不要なシーンのカットを行い、ナレーションやテキスト、音楽、特殊効果を加え、3DCGを挿入します。
また、VRコンテンツ特有のVR酔いを防ぐため、ブレや歪みを補正します。
VRゴーグルやHDM(ヘッドマウントディスプレイ)、スマートフォンなど、視聴するVR機器の環境に合わせ、データを出力します。
5.視聴
視聴するVR機器にデータをインストールして完成です。
没入感の高いリアルなVRを体験するには、VRゴーグルやHDMの使用をおすすめします。視野角も拡大し、高精細な大画面で迫力のあるVR動画が体験できるでしょう。