日本国内では2018年から大きく関心が高まっている、VR研修。
実際にVR研修をサービスとして提供しているジョリーグッドがVR研修はどういったものなのか、どういった事例があるのか、費用感はいくらぐらいなのか、メリットデメリットは何なのか。実際に作る、行う際の注意点などやなぜVR研修が効果があがるのかお伝えしていきたいと思います。
○VR研修とは?
VR研修はそれまでのPCを使った学習方法である「eラーニング」の延長と考えがちですが、受動的な視聴覚学習から双方向の能動的な体験型学習へと変わり、情報量もさることながら、伝えやすい・わかりやすい映像コンテンツが特徴です。
さまざまなシーンをリアルな仮想空間として用意して、自分がその場面に入り込み、理想的な対応や考え方を習得する、効果の高い実践的な研修が可能になります。
○VR研修の事例
・手術研修VR ジョリーグッド×ジョンソン・エンド・ジョンソン
https://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/20181105
創業以来、100年以上にわたりヘルスケア関連製品のリーディングカンパニーであるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社と株式会社ジョリーグッドは、VR(バーチャル・リアリティ)とAI(人工知能)による医療研修VRを共同開発しました。
ジョリーグッドが開発する人材育成ソリューション「Guru Job VR」の医療従事者向けのコンテンツとして開発され、不整脈の一種である心房細動手術を高精度360度カメラで撮影することで、遠隔地でも臨場感のあるVR研修が可能になりました。
さまざまな制約により、従来は手術の現場で見ることの困難であった名医による手技をVRでいつでもどこでも間近で体験することができます。
・ケンタッキーフライドチキン
https://www.moguravr.com/kfc-vr/
ケンタッキーフライドチキンでは、VRを用いたユニークな研修を実施しています。
仮想空間の中で体験しながら、フライドチキンの揚げ方を学ぶ、従業員教育用のコンテンツ「The Hard Way: A Virtual Reality Training Experience」です。
ゲーム要素を採り入れ、揚げ方の工程を楽しく学習しながら、モチベーションを向上させるとともに従来25分かかったキッチンを使用した研修が、VR研修により10分に短縮されるなど、研修費用のコストダウンも大きなメリットとして挙げられます。
・戸田建設
https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1904/05/news015.html
戸田建設はトンネル工事における危険予知能力や安全意識の向上を図る目的で、VR研修を導入しています。
再現が難しいトンネル事故を、臨場感のある安全体験VRコンテンツを通して、重篤災害を未然に防ぐための不安全行動や不安全状態を学習しながら、安全管理を体得する新しい試みです。
トンネル工事技術者の実体験を採り入れ、質の高い実践的な研修が可能となりました。
大林組の「VRiel」
大手ゼネコン大林組の提供する現場教育システム「VRiel」は、工事現場に潜在する施工ミスを再現する体験型研修教材として利用されています。
従来は実際にモックアップを使って研修を行っていましたが、「VRiel」を導入することで、研修のための人件費や研修設備の維持コストの削減にも繋がり、効率良く、多くのスタッフが均一で公平な研修を受けることができ、モチベーションの維持にも大きく寄与しています。
http://ieiri-lab.jp/it/2016/11/vr-bim-education.html
大成建設の「T-iROBO Remote Viewer」
大手ゼネコン大成建設の「T-iROBO Remote Viewer」は、VRならではのユニークな特徴を持つ実践型アプリケーションです。
遠く離れた場所からVRの3D画面を通して、重機の操縦を行うアプリケーションです。
災害で立ち入りのできない場所の早期復旧や重機操縦のリアルなトレーニング教材として期待されています。
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2017/170123_3748.html
積木製作の「安全体感VRトレーニング」
建築デザインや設計、景観シミュレーションなど、高精細CG(コンピューターグラフィックス)で支える積木製作では、先進のVR/AR技術を採り入れた「安全体感VRトレーニング」をリリースしています。
建築や建設現場に潜む事故やケガ、災害をリアルなVRで再現することで、疑似体験を通して、安全意識の向上や災害防止のための施策を考える教育教材として利用されています。
http://tsumikiseisaku.com/vrox/virtualtraining/
ウォルマートの接客研修VR
アメリカの大手小売チェーンストアであるウォルマートでは、サービスの均一化や顧客の満足度を高める施策としてVRを接客研修教材として導入しています。
新入社員からベテラン社員までムラのない質の高い顧客対応が提供できるように、ロールプレイング形式のリアルな接客研修コンテンツです。
他にも研修コストの削減や新店舗開店に向けた事前の準備など、さまざまなメリットが挙げられ、繁忙期でも安定的な質の高いサービスが提供できる点からも期待されています。
https://vrinside.jp/news/walmart-is-using-vr-training-for-its-staff/
○VR研修の費用感
VR研修のおおよその費用感は下記のとおりとなります。
●受託カスタマイズ型:その企業独自の研修コンテンツを開発する価格
およそ 500万円〜
●パッケージ型:すでにあるコンテンツ使用料とゴーグル、周辺機器一式の価格
50万〜百数十万
●SaaS型:コンテンツ利用料を月額金額として支払う形の価格
月額5万〜(機器初期費用別途)
○VR研修が効果的な理由
●没入体験することにより記憶定着効果が3倍以上
VRはゴーグルをかけることにより没入した状態がすぐに再現できます。
2D動画で例えるなら、映画に感情移入している状態と言えます。こういった状態になると簡単に心が動かされ、心が動くことで記憶に定着します。
非常に記憶定着効果が高い状態といえ、VR研修での効果の高さの一因となっています。
●体験=アクティブラーニングと捉えることができ、大幅に学習定着度があがる
研修を企画する時の考え方として、学習方法はアクティブラーニング(能動的)とパッシプラーニング(受動的)があり能動的なアクティブラーニングの方が圧倒的に学習定着度が高いという特徴があります。
VRは体験メディアのため、まさにアクティブラーニングといえ非常に高い学習定着度が期待できます。
●場面を想像する認知負荷が大幅にさがり、学習に意識が向く
シチュエーションにおけるトレーニングなどでは、場面を口頭で説明するなどの場合、そのシチュエーションを想像するのに脳の負荷=認知負荷が高くなり学習効果が低下してしまいます。
VRでは簡単にシチュエーションを没入再現できるので、認知負荷が非常に低く、学習に集中できます。
○VR研修の導入方法
VR研修は接遇研修から接客サービス研修、仕事の習得、労災対応、コンプライアンス研修など、さまざまなシーンを想定した企業研修への応用が考えられます。
どのように利用するかを決定後、VR専用カメラでシーンを撮影し、想定される問題や対応など習得すべきポイントに解説を織り交ぜながら、わかりやすく伝えるためのシナリオを設定しながら編集します。
できあがったコンテンツをVR機器にインストールすれば、VR研修が可能となります。
○VRで研修をするメリットは?
遠隔地であったり、危険を伴う高所、悪天候など再現が困難なシーンなどを仮想空間として創り出すことが可能です。特にコンテンツの中で重要となる箇所には適宜説明や補足を挿入することで、均一的な質の高い研修が効果的に実施できるメリットがあります。
また、一度VRコンテンツを制作してしまえば、時や場所を選ばずに繰り返して使用できるため、研修スタッフを必要としない点からも、大幅な研修コストの削減に繋がります。
加えて研修スタッフの教え方のバラつきや時間の制約もないため、より均一的な質の高い研修トレーニングが可能となります。
○VRで研修をするデメリットは?
VR研修に使用するVRコンテンツの制作やVR視聴機器の導入コストがかかる点はデメリットと言えるでしょう。
また、研修中は仮想空間に意識が集中してしまい、現実との乖離が生じる可能性が生じる点はリアルで臨場感のあるVRコンテンツならではの注意点です。
日ごろからVR機器のメンテナンスを欠かさず、VR研修に支障がでないように留意する必要があります。
○VR研修は効果的なのか?
VR研修は従来の企業研修を大きく様変わりさせる、新たな研修方法として注目されています。
研修施設やスペースを使って、社員を集めて専任のスタッフが研修を行う従来の大掛かりな集団研修のスタイルから、遠隔地でもVR機器さえ用意すれば、何度でも反復して体験研修ができる小規模な研修スタイルと変わります。
研修時間の短縮や研修スタッフの人件費の軽減に加え、スタッフの教え方に依存しない均一な研修内容がVR研修を採用する大きな要因として挙げられます。
VR研修は再現が難しい保守や労災体験、職人の技の伝承など、さまざまなシーンで利用が始まっています。
コストを抑えながら、企業が伝えたいと考える重要なポイントをわかりやすく、安全で確実に学んでもらう手法としてVR研修は効果的だと言えるでしょう。