ジョリーグッド の「楽しい」を探る
<前編>発達障害支援機関向けソーシャルスキルトレーニングVRプログラム「emou」プロデューサー青木雄志:テクノロジーの進化が人の成長を助ける

ジョリーグッドの新サービス「emou(エモウ)」とは、専門医監修のもと開発した、VRを活用した発達障害支援機関「放課後等デイサービス」や「就労移行支援施設」向けのソーシャルスキル(※1)トレーニング(SST)プログラム。このサービスの開発にゼロから携わり、制作から事業開発までのすべてを担ってきたのが、経営戦略局クリエイティブ事業部シニアプロデューサーの青木雄志さんです。“テクノロジーは、それを必要とする人に使われて、初めて価値がある。”という企業理念のもと「emou」を誕生させた青木さんが、「JG PERSON」の第5走者として登場です。

※1:ソーシャルスキル:対人関係や集団行動を上手に営んでいくための技能(スキル)のこと

VRとAI、二つの最新テクノロジーを追究できることがJGの魅力

JOLiC編集部(以下、編集):青木さんはAIやVRというものにもともと興味があったんですか? 青木雄志(以下、青木):以前はテレビの番組制作や動画制作会社で事業開発を手がけていたのですが、囲碁AI「アルファ碁」というものをきっかけにAIに興味を持ちました。編集:囲碁AIからなんですね。青木:囲碁は盤のどこに打ってもいいので、将棋やチェスよりもはるかに盤面のパターンが多く、AIが人間に勝つのは10年以上先になると言われていました。それが最近、AIが人間の世界王者に勝って世界的なニュースになり、AIに興味を持つようになりました。編集:AIの偉業ですね! 青木:その話はさらに続きがあるんです。「アルファ碁」は人間の棋譜を学習して強くなったのですが、人間の棋譜を全く使わずAI同士の対戦のみで囲碁を学習した「アルファ碁ゼロ」が、その「アルファ碁」に勝ったというニュースを見たんです。AIの進化は、人間の可能性をもっと引き出すものになると確信。そんな時に、VRとAIを組み合わせたサービスを行っているジョリーグッドに出会いました。編集:ジョリーグッドへの入社はいつですか?青木:2018年4月です。編集:全く違った世界に飛び込んだ印象ですが。青木:ジョリーグッドは当時、テレビ局やプロダクションに向けてVRソリューションを提案していて、これまで自分がやってきたテレビ番組制作や動画制作と近い間柄で、VRとAIという最新テクノロジーが追究できることに魅力を感じました。編集:VRに対する印象は?青木:行ったところがない場所で、VRを見てから実際に現地に行くとものすごい感動がありました。仕事でも撮影前のロケハンなどに行けなくても、VR映像は情報量が多いので、かなり役立ちます。編集:普通の映像とかなり違うんですか?青木:高さの感覚もつかめるし、VRを見てから現地に入ってもそれほど差がありませんね。写真などはキレイなところだけ切り出せるけれど、VRは良い意味でも悪い意味でもそれができない。別の場所に連れて行く感覚が得られるVRは素晴らしい技術です。

発達障害の方が感じる“生きづらさ”を、VRで手助けする

編集:ジョリーグッドには営業職で入社されていますが、現在は事業開発のシニアプロデューサーとしてお仕事されているんですね。青木:もともと事業開発を手がけたいという希望があり、最初は営業というポジションに。営業といっても、ジョリーグッドの場合、単にコンテンツを販売するのでなく、もう少し広い視野での提案が多いんです。上路さんと一緒に行動して、新しいサービスをつくっていくのも面白かったですね。編集:上路さんのイメージはいかがでしたか?青木:一般的なスタートアップ企業の社長のような押し出しの強さがなく、とてもスマートだなと(笑)。社風も穏やかですし、入社当初はビジネスの相手がテレビ局などだったので、親しみも持てました。編集:青木さんは「emou」の立ち上げから参加されていますよね。青木:そうです。発達障害とは、生まれつき脳機能の発達にかたよりがあり、社会生活において“生きづらさ”を感じる障害です。そこをVRで手助けできないかという考えからから、「emou」がスタートしました。編集:社会的な意義を感じます。青木:ジョリーグッドのスローガンは「人の成長をテクノロジーで加速させる」。自分自身もテクノロジーに助けられてきた実体験があるので、とても共感できました。編集:どんな実体験が? 青木:僕はものすごい方向音痴で、知らない街でコンビニなどに入ると、店を出る時にはどちらから来たか分からないほどです(笑)。今は地図アプリがあるので、生きづらさを感じることもなくなりました。編集:重症なんですね(笑)。青木:地図を持っていても、その中に自分がいないのでどこにいるのかわからなくなってしまうんです。たぶんテクノロジーが発達していない時代なら、お客さんのところに行くのも困難だったと思います(笑)。編集:青木さんがスムーズに営業に行けるのも、テクノロジーのおかげ(笑)。

青木:あと僕は、幼少の頃から極度に視力が悪いという身体的な問題も抱えています。今はコンタクトで矯正していますが、少し前なら眼鏡をかけるか、見えないまま生活するしか選択肢がなかったんです。編集:ご自身の経験が開発の力になっているんですね。青木:とはいえ、VRも万能ではないので、どの分野でサポートできるか議論を重ね、トレーニングの部分に着目してサービス化することになりました。

リアルな体験の中で訓練でき、採点機能によって効果を可視化。「emou」は全く新しいSST

編集:「emou」の名前にはどんな意味が?青木:僕、『ドラえもん』が好きで。人とテクノロジーの関係がモノや道具ではなく「友達」として描かれているところが好きなんです。それで『ドラえもん』の「ドラ」を取って「えもん=emon」。語尾の「n」をひっくり返して「u」で「emou」。また、エモーショナルの「emo」でもあります。「u」にはunknown、you、universeなど色んな意味を含ませています。編集:トレーニングにおいてはどんな課題があったんですか? 青木:発達障害の方は初めてのことが苦手なので、パニックにならないよう、困りそうな場面の予習を行います。今までのSSTでは、ワークシートやロールプレイで実施していたのですが、それでは再現できない要素が多く、効果が疑問視されていました。編集:SSTをVR化するメリットとは? 青木:VRによって“体験”そのものができることが大きいですね。たとえばケンカをしたときにどう対応するかのトレーニングする時に、今までイラストなどを参考に場面の説明をしていましたが、理解しにくい部分もありました。でもVRは、リアルな体験の中でトレーニングができるようになります。編集:なるほど。青木:実際に体験しようにも、リアルなケンカやトラブルを発生させることは難しいです。VRであれば、繰り返し同じ場面を体験できてパニックにならず徐々に慣れていくことが可能です。編集:お子さんの場合、学校というシチュエーションが多そうですね。青木:教室にいる場面では、プロの役者をつかって学校の先生役、生徒役を立て撮影しました。先生が話している時、生徒がちゃんと話している人の方を向いているのか視点を解析し採点しています。効果的なトレーニングができるようになったという評価をいただき、とても嬉しく思っています。

(後編へ)

Profile
青木雄志 Yuji Aoki
テレビ番組の制作、動画制作会社での事業開発などを経て、2018年4月に株式会社ジョリーグッドに入社。発達障害支援機関向けのサービス、ソーシャルスキルトレーニングVR「emou」のビジネス立案から制作、事業開発まで幅広く携わる。現在は経営戦略局クリエイティブ事業部のシニアプロデューサーとして活躍。
Photo:Jiro Fukasawa

 

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