新しい価値を生み出すVR開発会社ジョリーグッドで働くメンバーを紹介するリレー企画「JG PERSON」。今回登場いただく第3走者は、CTO(チーフ・テクニカル・オフィサー)の土門広弥さん。かつてガラケーが全盛の時代に、マルチメディア向けの映像配信プラットフォームの開発を手がけた技術者であり、ジョリーグッドの創生期にはシステムから映像までVRの開発すべてを一人で担った天才エンジニアです。
子供のころからおもちゃがパソコンだった
JOLiC編集部(以下、編集):土門さんも、丸山さんと同じく上路さんとは創立前からのお付き合いとうかがいましたが、出会いはいつ頃ですか?土門広弥(以下、土門):大学時代にサークルのHPをつくっていたんですが、そのサークルの先輩がアルバイトでお世話になっていたのが上路さん。そのころ上路さんは、IBC岩手放送でサイト制作を手がけていて、HPの制作や更新ができる人材を探しているということで紹介されました。編集:当時の上路さんの印象は?土門:今と変わらずポジティブな印象でしたけど、昔はもう少し穏やかでしたよ。地方の人ならではの柔らかさというか……。編集:今は穏やかではない?(笑)土門:そうは言いませんが、今はパワーアップして都会感が出てるかな(笑)。編集:大学卒業後も博報堂DYグループで上路さんと一緒だったとか。土門:実は新卒で別の会社に入社したんですが、半年ほどで辞め、上路さんのプロジェクトに合流しました。編集:えっ、そんなことが!土門:当時はガラケーが主流の時代で、新卒で入った会社はガラケーのサービスを手がけていました。でも入社した2008年にiPhoneが発売されて、スマホのサービスをつくってみたくなった。そんな時に博報堂DYグループで働く上路さんから、新規事業への誘いを受けたんです編集:入社して半年で会社を辞めるなんて、勇気のある決断ですね。
土門:とにかく新しいことにチャレンジする環境に身を置きたい、と。ガラケービジネスがうまくいっている会社では、新しい事業に参入するのは難しいと思ったんです。編集:上路さんという存在も転職の後押しになったのでは?土門:そうですね。上路さんと一緒に仕事できるのは魅力的で、そこに迷いはありませんでした。でも決断してからは、時間との闘い。新規事業に参加する時期が決まっていたので、逆算すると、翌日には会社に退職を伝えないといけないという状況でした(笑)。編集:博報堂DY時代はどんなプロジェクトを上路さんと手がけたんですか?土門:映像配信プラットフォームです。パソコンだけでなく、携帯やスマホなどさまざまな端末から見られる動画配信サービスですね。編集:今では当たり前ですが、10年前ぐらいだと画期的ですよね土門:革新的なサービスを開発するのに、開発で使えるMacは1台あるかどうか……。こんな環境でiPhone向けのサービスが作れるのかという状態だったので、大変なことも多かったですけどね(笑)。編集:そんな大変な環境であっても開発できる土門さんって、どんなお子さんだったんですか?土門:小さい頃から家にパソコンはあって、小学生くらいから独学でプログラムを書いたりしていました。数字を打ち込むと計算するとか、簡単なものですけど。編集:小学生の頃からプログラミング!?土門:遊ぶものがなかったので、結果的にパソコンで遊んでいたというだけです。おもちゃのレゴとプログラミングは同じようなもので、形があるかないかだけの違い。パーツを組み合わせていって、何かをつくるのがとにかく楽しかったんです。新しいもの好き、ガジェット好きは当時からですね。編集:黙々と作業することが得意だったんですね。土門:1人の方が、最終的なイメージに向かってどうアプローチすればいいか、自分の中で解決できるからいいんですよ。編集:それが仕事の速さの秘けつかも。土門:人と相談することでコミュニケーションコストは発生しますから、時間はかかりますが、クオリティの面では、ほかの人と協力した方が良い仕上がりになると思っています。今は人も増えてきて、とてもやりやすい環境になってきましたね。
創業者と二人三脚で始めたVRへの挑戦
編集:VRに興味を持ち始めたのは?土門:2013年頃です。編集:かなり初期ですよね。土門:最初2011年頃に読んだウェブの記事では、ヘッドマウントディスプレイをつけるだけで、何十インチの大画面が広がるという触れ込みで、すごく期待していたんですが、実際は遠くに小さなデバイスがあるだけ。視野がもっと広がればいいなと思っていたら、後にそういうデバイスが出てきて、俄然興味が出てきました。編集:そんな時に上路さんからジョリーグッドの話を聞いたんですか?土門:いえ、それはまだ先ですね。当時、上路さんはアメリカ滞在中で、2014年に僕は会社のアメリカ出張で当時注目を集めていた眼鏡型のガジェット「Google Glass」のイベントに参加しました。その出張中に、上路さんとシリコンバレーの企業を視察して回りました。社会科見学のようなものです。編集:「Google Glass」の感触は?土門:画面がとにかく小さい。VRなら360度見られるし、VRの方が将来性が高いんじゃないかと思いましたね。編集:それがVR開発への足がかりに……。土門:その時点では、まだそんな段階ではなかったですね。2014年にアメリカで上路さんに会った時、ジョリーグッドという会社はできあがっていましたが、まだはっきりとした事業は決まっていませんでした。編集:そうなんですか!?土門:僕自身ちょうどその頃、次のステップをどうしようか悩んでいた頃で、上路さんにテクノロジーを使ったサービスを一緒につくろうと声をかけてもらったんです。“両親に知ってもらえるようなテクノロジーサービスをつくる”のが目標というところに共感して決意しました。編集:VR事業を手がけることになったきっかけは?土門:スマートグラス、スマートウォッチが全盛で、VRの認知度はまだそれ程なかった頃に新しいガジェットとして、上路さんに紹介しました。でも最初はあまりいい反応ではなくて……。忘れた頃に、上路さんがVRをやろう、と(笑)。編集:土門さんが上路さんに新しいテクノロジーを紹介して、上路さんがビジネスを思いつく。まさに今のワークフローですね。土門:それで2014年の秋頃から、VRの基礎研究などを始め、2015年春頃にプロフェッショナルVRラボ「GuruVR」を発表しました。編集:研究から始めて、開発まで1人で、ですか?土門:最初は外注も考えていましたが、いろいろ調べて開発を進めるうちに、気がついたらほとんど1人でつくってしまってましたね(笑)。編集:上路さんからリクエストはありましたか?土門:お互いに操作をコントローラー不要でできる簡単なものが良いと意見が合って、直感的にできる視点操作を取り入れました。
キャラクターが違うから、言いたいことも言い合える
編集:土門さんから見た上路さんのすごいところは?土門:新しい技術をサービスとして成立させる力、発想力というのは感心します。僕もそれを具現化することにやりがいを感じています。編集:上路さんも土門さんがいなければ、今のジョリーグッドはなかったと言っていたそうですよ。土門:キャラクターが違うから、うまくいっているのかもしれません。上路さんの視点は意外性があって、技術者として刺激されます。編集:いい関係性ですね。土門:たまにイエローカードにならない程度に、意見をぶつけ合うこともあります。とはいえビジネス面は、上路さんを信頼しているので、あくまでエンジニアとしての意見を言うまでですけどね。編集:大変な要求をされたこともあると思いますが。土門:それはたびたびありますけど……。たとえば、納期の面で無茶ぶりをされた時は、自分の仕事の範囲の中で、現実的な回答をするだけです(笑)。今は人も増えて、チーム体制になっているので、メンバーと協力することでできることもかなり増えてきましたね。
Profile
土門広弥 Hiroya Domon
大学在学中に上路と出会い、2008年より博報堂DYグループにて映像配信プラットフォームや、ロケーションベースの観光ガイドアプリなどの開発ディレクション業務に従事。2015年、株式会社ジョリーグッドに参画。インフラ構築からアプリ開発、360度映像の制作まで幅広く担当。2018年、同社CTOに就任。
Photo:Jiro Fukasawa